ものも言い様で角がたつ・口は災いの元

小雨まじりの中、近所のクリーニング店(チェーン店)へＹシャツを持って出向いた時の事である。間口５メートルほどの店のガラス扉の向こうのカウンター越しに、二人のパートらしき女店員が正面を向いて無表情で、ひとりは腰掛けたまま、もうひとりは立った侭で、私が入店するより一足先に外車で乗り着けた婦人が、雨の降る店舗前の駐車場の車内から汚れ物を取り出して、小手をかざして店内に駆け込んだ。
　　
一足遅れて入って順番待ちをして、何気なく静観していた時のことである。
　　
二人の店員は頭を下げるでもなく、口先だけで 「いらつしゃいませ」 と無愛想に言う光景にめぐり合わせた。
　　
先客は店員の言われる侭に数点の洗濯代の合計を支払って 「無言」 で出て行った。
　　
何時もは家人に洗濯出しを任せていたので、「これは幾らになりますか」 と尋ねると、店員のひとりがいきなり「会員ですか？」 ときた。其の物言様はトゲトゲしいもので、「会員でなければ１９８円です」 と切り口上な物言いで 「会員なら？」 と問うと 「１５８円」 と 「です」 とも付けずに応答する有り様である。
　　
「愛想もなければコソもない」 とはこの事で、いくら間に合わせに雇っているといっても、もう少し氣の利いた 「一般常識を弁えた、礼儀の真似事でも心得のある人間」 をおいた方が良いのではないか？　と　喉の奥まで出かかった憤りをグッと飲み込んで 「他へ出します」 と踵(きびす)を返して外へ出た！
　　
肩越しに半身で振り返って観ると、二人の店員が駆け寄った風に、表情で私の方を指してヒソヒソと話し合っている風景がガラス越しに観えた。

気の利いた店なら、店内から傘を広げて、お客様に傘を差しかけて 「雨の中をようこそお越し下さいましてありがとうございます」 の迎え入れの言葉を、言われた客としては、思わず 「ありがとう」 の挨拶言葉が反射的に其の店員に返しに出したであろうに。

ご来店のご用向きを尋ねるにしても 「メンバー会員に登録されますと色々とお得な割引が付いて参りますので如何でしょうか？」 の笑顔で爽やかな応対があれば 「口コミ」 でプラスαの集客が、其の店の収益に大きく貢献する事間違いなしである。

せいいっぱいの笑顔と丁寧に腰を折って頭を下げ 「ようこそお越し頂きましてありがとうございます」 「次もまたどうぞお越しくださいませ　お待ちして居ります。ありがとうございました」 この「まごころ応対」 を常日頃から心底こころから感じて実践する理解と行動は、当事者本人が 「実践する理解と心得」 を 「こころ根」 で会得しなければ、うわべだけの社交辞令だけで応対しているのとでは 「天と地」 ほどに相手の心に如実に且つ敏感に反応となって表れてくる道理である。

２０１０年２月１０日　大谷　誠