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《寸止めの妙》

櫻の描写で著明な画家のリトグラフを3額(がく)一括して換金しようとして、ネット上に載る3ギャラリーへ買い取り試算を頼んだ。
 A店の鑑定士は電話口頭で 「凡そ1額5万円前後の流通価格で、3額で15万円、確かな値は現物を確認後に・・・」 と。
 B店の鑑定士は、当日の11時に来訪し、現物を観て「3額まとめて30万円」と表現した。
 C店の鑑定士は、本日15時にお伺うと言い、定刻に来訪し現物を鑑定後 「描写の景色で差は有るものの1額当り8万円で都合24万円」 と買い取り値を付けた。
 結果的に夫々の鑑定士には、向こう5日以内に返答すると即答を保留した。
 2日後にB店へ、個別相談をしたい旨を連絡すると、打診したその日の16時に再来。指値の一番高かったB店に 「1額ずつの指値は如何程か」 を訊ねると
 「3額まとめて買い取らせて貰えれば再考するものの、1額ずつの指値は8万・7万・12万で、単額で無く、何とか3額まとめて買い取らせて貰いたい」 と言う。
 それでは・・・と、此方の希望額は36万円で有る事を伝え、其の根拠は、当時の買値が3額の総額が約120万で、当時から16年〜23年の経過を考慮しても、3割は最低限の売り渡しの 「想い入れの覚悟の値」 であることを縷々説いた。
 件(くだん)の鑑定士は 「何故B店を選んだのか」 と問うので 「貴店へ依頼をかけた時の対応が爽やかであった事、打診当日即刻来訪してくれた事、来訪時に紳士的且つ誠意ある対応をしてくれた高感度」 等を率直に伝え 「できれば貴店に一括してお任せしたい」 旨を伝えると、鑑定士自身が持つパソコンで過去の同類の競売価格を何度も何度も繰り返し検索する事渋面(しぶづら)七変化で困惑思案の末 「30万が買い取り限度で36万は限度をはるかに越えた値で・・・。お客様の 『想い入れの覚悟の値』 を十二分に考慮させて頂き、35万の切りのいい精一杯の値でお願いします」 と泣きを入れた。
 商いは人間と人間との触れあいであるから、完勝してはならない。
 自分の利益を優先し、相手を打ちのめすのは、一時的には上手くいっても、後が上手くいかない。
 いい交渉とは、相手との妥協点を探り、以降の人間関係を豊かに継続させる事をこころに留め置く事が重要である。
 と己を戒めて、鑑定士の泣きを汲み入れ、35万円で妥協に至ったしだい次第。

2014年10月20日 大谷 誠 


  

リトグラフ (lithograph, lithography) は版画の一種で、平版画にあたる。水と油の反発作用を利用した版種で、製作過程は大きく 「描画」 「製版」 「刷り」 の3行程にわかれる。ほかの孔版画、凹版画、凸版画などに比べると複雑で時間も多く要するが、クレヨンの独特のテクスチャや、強い線、きめ細かい線、筆の効果、インクの飛ばした効果など、描写したものをそのまま紙に刷ることができ、多色刷りも可能で、版を重ねるにつれて艶を有した独特の質感が出てくる。

19世紀頃、ヨーロッパで偶然から原理が発見され、以降ロートレックなどの画家が斬新で芸術性の高いポスターをこの方法で描いた。以前は巨大な石(石灰岩)に描いていたため石版画(石版印刷術、リトグラフィ)とも呼ばれるが、近年は扱いやすいアルミ板を使うことが多い。



 
 

 

 
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