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ご 意 見

      

もうこれで満足だという時は、すなわち衰える時である。


       
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 BL会 ネット広場 211025(月) 

■おはようございます。
■10月25日(月曜日)のネット広場です。

 

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皆さん おはようございます。
 次官候補の自治税税務局長がふるさと納税発足時、制度上に問題があるとの理由で反対したところ管官房長官が翌年に自治大学に左遷した(AERAなど)事や幹部役人の忖度が当たり前になっている時、財務事務次官 矢野康治氏が文藝春秋11月号に「モノ申す」で政府のばらまき方針では国家は破綻すると述べ、異例の寄稿で波紋を広げています。
 岸田総理は「聞く耳を持つ」と言っていますので、活発な議論をして、日本をよりよい方に導いていただきたいです。
 経済同友会の桜田謙悟代表幹事は「100%賛成」と述べて擁護していますが、長谷川 幸洋氏は財務官に騙されてはいけない。自民党の高市早苗政調会長は即座に「(「バラマキ合戦」という指摘は)大変失礼ないい方だ」と述べています。
 岸田内閣がこの矢野事務次官をどう扱うかどうか注目しています。
 本日の日経新聞電子版でも論じられています。参考まで。 (太田廣)

財務次官、モノ申す 文藝春秋2021年11月号
〜「このままでは国家財政は破綻する」〜 財務事務次官 矢野康治
最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえあると思います。
数十兆円もの大規模な経済対策が謳われ、一方では、財政収支黒字化の凍結が訴えられ、さらには消費税率の引き下げまでが提案されている。まるで国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話ばかりが聞こえてきます。
かつて松下幸之助さんは、「政府はカネのなる木でも持っているかのように、国民が助けてほしいと言えば何でもかなえてやろうという気持ちでいることは、為政者の心構えとして根本的に間違っている」と言われたそうですが、これでは古代ローマ時代のパンとサーカスです。誰がいちばん景気のいいことを言えるか、他の人が思いつかない大盤振る舞いができるかを競っているかのようでもあり、かの強大な帝国もバラマキで滅亡(自滅)したのです。
私は一介の役人に過ぎません。しかし、財政をあずかり国庫の管理を任された立場にいます。このバラマキ・リスクがどんどん高まっている状況を前にして、「これは本当に危険だ」と憂いを禁じ得ません。すでに国の長期債務は973兆円、地方の債務を併せると1,166兆円に上ります。GDPの2.2倍であり、先進国でずば抜けて大きな借金を抱えている。それなのに、さらに財政赤字を膨らませる話ばかりが飛び交っているのです。
あえて今の日本の状況を喩えれば、タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなものです。氷山(債務)はすでに巨大なのに、この山をさらに大きくしながら航海を続けているのです。タイタニック号は衝突直前まで氷山の存在に気づきませんでしたが、日本は債務の山の存在にはずいぶん前から気づいています。ただ、霧に包まれているせいで、いつ目の前に現れるかがわからない。そのため衝突を回避しようとする緊張感が緩んでいるのです。

  「心あるモノ言う犬」としてお話ししたい
このままでは日本は沈没してしまいます。ここは声だけでも大きく発して世の一部の楽観論をお諌めしなくてはならない、どんなに叱られても、どんなに搾られても、言うべきことを言わねばならないと思います。
諸々のバラマキ政策がいかに問題をはらんでいるか、そのことをいちばんわかっている立場なのに、財務省の人間がもんもんとするばかりでじっと黙っていてはいけない。私はそれは不作為の罪だと思います。
かつて”カミソリ後藤田”の異名を取り、名官房長官と称された後藤田正晴さんが、内閣官房の職員に対して発した訓示、いわゆる「後藤田五訓」の中に、「勇気をもって意見具申せよ」というのがあります。
大臣や国会議員に対して、ただ単に報告や連絡を迅速に上申するだけでなぐ、それに的確に対処する方途についても、しっかりと臆せず意見を申し述べよと言っているのです。「決定が下ったら従い、命令は実行せよ」ともあります。役人として当然のことです。
私は、この5訓は吏道(役人道)の基本を見事に示していると思います。私たち国家公務員は、国民の税金から給料をいただいて仕事(公務)をしています。決定権は、国民から選ばれた国民の代表者たる国会議員が持っています。
決定権のない公務員は、何をすべきかと言えば、公平無私に客観的に事実関係を政治家に説明し、判断を仰ぎ、適正に執行すること。しかし、これはあくまで基本であって、単に事実関係を説明するだけでなく、知識と経験に基づき国家国民のため、社会正義のためにどうすべきか、政治家が最善の判断を下せるよう、自らの意見を述べてサポートしなければなりません。
ここ4半世紀来、政治主導とか、官邸主導といった言葉が標榜されてきましたが、だからといって単なる。指示待ち”を決め込むとか、下されようとする政治判断に違和感を禁じ得ないような場合でも、黙してただ服従するのは、あたかも中国歴代王朝の宦官であり、無為徒食であり、血税で禄を食む身としては血税ドロボウだと思います。落選するリスクもなく、職を失うリスクにも晒されていない公僕は、余計な畏れを捨て、己を捨てて、日本の将来をも見据え、しっかり意見具申せねばならないと自戒しています。
私は、国家公務員は「心あるモノ言う犬」であらねばと思っています。昨年、脱炭素技術の研究・開発基金を1兆円から2兆円にせよという菅前首相に対して、私が「2兆円にするにしても、赤字国債によってではなく、地球温暖化対策税を充てるべき」と食い下がろうとしだところ、厳しくお叱りを受け一蹴されたと新聞に書かれたことがありました。あれは実際に起きた事実ですが、どんなに小さなことでも、違うとか、よりよい方途があると思う話は相手が政治家の先生でも、役所の上司であっても、はっきり言うようにしてきました。
「不偏不党」1これは、全ての国家公務員が就職する際に、宣誓書に書かせられる言葉です。財務省も霞が関全体も、そうした有意な忠犬の集まりでなければなりません。

          国民のバラマキ歓迎は本当か
もちろん、財務省が常に果敢にモノを言ってきたかというと反省すべき点もあります。やはり政治家の前では嫌われたくない、嫌われる訳にはいかないという気持ちがあったのは事実です。政権とは関係を壊せないために言うべきことを言わず、苦杯をなめることがままあったのも事実だと思います。
財務省は、公文書改ざん問題を起こした役所でもあります。世にも恥ずべき不祥事まで巻き起こして、「どの口が言う」とお叱りを受けるかもしれません。私自身、調査に当たった責任者であり、あの恥辱を忘れたことはありません。猛省の上にも猛省を重ね、常に謙虚に、自己検証しつつ、その上で「勇気をもって意見具申」せねばならない。それを怠り、ためらうのは保身であり、己が傷つくのが嫌だからであり、私心が公を思う心に優ってしまっているからだと思います。私たち公僕は一切の偏りを排して、日本のために真にどうあるべきかを考えて任に当たらねばなりません。
バラマキ合戦は、これまで往々にして選挙のたびに繰り広げられてきました。でも、国民は本当にバラマキを求めているのでしょうか。日本人は決してそんなに愚かではないと私は思います。本当に困っている方が一部いるのは確かで、その方たちには適切な手当てが必要ですが、日本人みんなが「カネを寄こせ」と言っているかというとそうではない。みんながみんなバラヌキに拍手喝采してなどいない、見くびってはいけない、とのご指摘もたくさんいただいています。
国民は、そんなことよりも、永田町や霞が関に対して、「やるべきこと(真に必要なこと)だけをちゃんとやってくれよ」と思っている方が多いのではないだろうか。だとすると国の将来を心配している国民の期待に、自分たちは的確に応えられていないのではないかと思ってきました。ですから、この原稿では、国民のみなさんにも、事実を正直にお知らせし、率直な意見を申し上げて、注意喚起をさせていただきたいのです。
わが国の財政赤字(「一般政府債務残高/GDP」)は256.2%と、第2次大戦直後の状態を超えて過去最悪であり、他のどの先進国よりも劣悪な状態になっています(ちなみにドイツは68.9%、英国は103.7%、米国は123.7%)。

       ワニのくちは塞がなければならない
歳出と歳入(税収)の推移を示した二つの折れ線グラフは、私が平成10年ごろに。ワニのくち”と省内で俗称したのが始まりですが、その後、4半世紀ほど経ってもなお、「開いた口が塞がらない」状態が延々と続いています(4頁のグラフ参照)。
“ロスト・デケイズ”とも呼ばれるバブル崩壊後の20年ほどの間は、「財政再建は時期尚早だ。もっと経済がよくなってからだ」という声が強く、財政健全化の議論が先送りされがちでした。今、標榜されている「経済最優先」も、要するに財政再建は後回しということです。急激すぎる財政再建が経済の腰折れを招きかねないという懸念はごもっともですが、日本の財政は(景気がよくても赤字のままという)「構造赤字」であり、いわゆるバブル期(1990年前後)でも、ワニの口は狭まりはしたものの、歳出と税収が逆転する(黒字になる)ことはありませんでした。また、安倍政権下で有効求人倍率が1.6を超えるほどのいわゆる完全雇用状態の下でも、黒字にはなりませんでした。
ですから「経済成長だけで財政健全化」できれば、それに越したことはありませんが、それは夢物語であり幻想です。わが国は、向こう半世紀近く続く少子高齢化の山を登りきらねばなりません。さらに、これまでリーマン・ショツク、東日本大震災、コロナ禍と10数年に2度 も3度も大きな国難に見舞われたのですから、「平時は 黒字にして、有事に備える」という良識と危機意識を国 民全体が共有する必要があり、歳出・歳入両面の構造的な改革が不可欠です。
世界の日本以外の先進国は、経済対策として次の一手を打つ際には、財源をどうするかという議論が必ずなされています。
コロナ対策に当たっても、英国では、法人税率の引上げ(19%→25%)が発表され、米国では、法人税率の引上げや富裕層への課税強化が提案されています。ドイツはもともと財政黒字であり、コロナで発生した赤字(債務)を20年間で償還する計画を発表しました。フランスでは、今後長期にわたり歳出増を歳入増より抑えるとしており、楽観的な成長率を前提とした高い税収増は想定せず、歳出抑制を続けていく意向を示しています。
また先進国では、特にポスト・コロナ政策については、そもそも財政出動というより、民間資金をいかに活用するかが議論されています。この期に及んで「バラマキ合戦」が展開されているのは、欧米の常識からすると周回遅れどころでなく2周回遅れ。財源のあてもなく公助を膨らませようとしているのは日本だけなのです。

      10万円の定額給付金も死蔵されるだけ
国内に目を転じれば、これはあくまでもマクロで見た数字ですが、家計も企業もかつてない“金余り”状況にあります。特に企業では、内部留保や自己資本が膨れ上がっており、現預金残高は259兆円(2020年度末)。コロナ禍にあっても、マクロ的には内部留保のうちの現預金が減っていません。
また家計においても、マクロ的には、全世帯を所得階層別に5分割したうち、最も低い所得階層を含む全ての階層で貯蓄が増えています。
このような経済情勢の下では、昨春の10万円の定額給付金のような形でお金をばらまいても、日本経済全体としては、死蔵されるだけで、有権者に歓迎されることはあっても、意味のある経済対策にはほとんどなりません。

「大幅なGDPギャップを埋めるために大規模な補正予 算が必要だ」という声も聞かれますが、どんなに追加の歳出を計上しても、実際に最終消費や投資に回されなければ、需要創出につながらず、GDPギャップは一向に理まらないのです。
そればかりか過剰な給付金や補助金は、かえって企業 の競争力を削ぐこととなり、日本経済の活力をも劣化させてしまいます。何が過剰かは主観の問題でもあり、「コロナ禍なのに、過剰だなんて何を言っているんだ!」という声が上がりがちですが、国際的に見て日本が相対的に甘美なことを続けていると、日本の国際競争力はますます欧米に水を空けられてしまいます。国際競争力とか生産性向上が重要視されている中で、これも深刻な問題です。
コロナ禍も2年近くなり、今や”ベンドアップ需要(うっ積した需要)とか、〃リベンジ消費(あだ討ち消費)という言葉が唱えられるほど、ショッピングや外食や旅行をしたくてうずうずしている消費者が多いとみられています。給付金など支給せずとも、感染状況がある程度抑制できるようになれば、自ずと消費活動は活発になると思われます。
いま日本国内で真に強く求められているのは、「金を寄越せ、ばらまけ!」というよりも、いざという時の病床確保であり、速やかなワクチン接種であり、早期の治療薬の提供であり、ワクチン・パスポートなどの経済活動をうまく再起動させるためのイグニション(点火装置)のほうです。
これらは、カネ以前の問題であったり、すでに財政措置は終わっているものであったり、民主導でやらざるを得ないものであったりなど、巨額の財政出動(公助)を必要とするものではありません。
病床確保については、医療機関の経営状況がコロナ前の水準を取り戻している中で、医師や看護師の人員配置をどう工夫していくかという問題です。ワクチン購入については、もうブースター分を含めて予算措置されています。治療薬については、既に開発段階ではなく、続々と治験、承認段階に入っています。ワクチンパスポードについては、経済界が主体的に利活用するのを側面支援するもので、そんなに大きな予算が必要となるものではありません。
昨年度の予算の繰り越しも、四月時点では約30兆円あり、それもこの半年のうちに徐々に使われているにしても、まだその多くが残っています。
本当に巨額の経済対策が必要なのか。その経済対策は本当に有効なのか。そのコストや弊害も含めて、よく吟味する必要があります。海外の動向に鑑みて、国内経済の実態に鑑みて、日本の経済生産性・国際競争力に鑑みて、国民の差し迫った実需に鑑みて、冷静に議論する必要があります。

     GDPを増やしても赤字が減らない理由
今のような超低金利情勢のもとでは、金利が事実上ゼロなので、中には、「今こそ、思い切って大量に国債を発行して、有意な財政出動によってGDPを増やすべきだ。そうすれば、『国債残高/GDP』の分母が増大するから財政も健全化する」と唱える向きもあります。一見まことしやかな政策論ですが、これはとんでもない間違いです。
たしかにこの10年ほど、金利が成長率を下回るという、借り手(国債発行で言えば国)にとってありがたい状態が続いています(金利ボーナス期間と呼ばれています)。住宅ローン、自動車ローン、消費者ローンの借り手も、金利の恐怖を体験した人は少ないはずです。従来は、金利は成長率を上回るのが普通でしたから、給与の上昇が追いつかず金利を返すだけで精いっぱいという人がたくさんいました。しかし、今はいわば「借り得」の時代。先ほどの政策論の根幹には、借り得なのだから、たくさん借りて財政出動をしてGDPを大きくしてしまえば、相対的に借金(=国債残高/GDP)は減るはずだという考えがあります。        丿
しかし、財政出動を増やせば、単年度収支の赤字幅(正確に言えば基礎的財政収支赤字のGDP比)が増えてしまい、それを相殺してくれるはずの「成長率−金利」の黒字幅との差が開いてしまいます。その結果、「国債残高/GDP」は増え続け、いわば、’金利は低くても元本が増え続けてしまうので、財政は際限なく悪化してしまうのです。
先ほどの政策論のどこが間違っているのかと言えば、財政出動によって、「国債残高/GDP」の分母であるGDPが一定程度は膨らむにしても、分子の国債残高も金利分だけでなく、単年度収支の赤字分も膨張してしまう点が無視されているのです。
小理屈めいた話はうさん臭い、ポンドかな、などとお感じになるかもしれません。しかし、のられはケインズ学派かマネタリストかとか、あるいは近代経済学かマルクス経済学かとか、そういった経済理論の立ち位置や考え方の違いによって評価が変わるものではなく、いわば算術計算(加減乗除)の結果が一つでしかないのと同じで、答えは一つであり異論の余地はありません。

       日本国債の格付けに影響しかねない
財政を健全化するためには、金利ボーナス期間に、単年度収支の赤字幅を十二分に(正確に言えば、少なくとも「成長率−金利」の黒字幅以内にまで)縮めて行かねばなりません。そうすれば財政のさらなる悪化はなんとか回避できます。それが日本の目指すべきボトムーライン(最低限の目標)であり、王道なのです。
コロナ対策で一時的に財政収支の悪化が生じることはやむを得ないとしても、コロナ禍が終わっても、金利ボーナス期間は、ずっと単年度収支の赤字を放置するとか、赤字の拡大を容認してしまうようでは、国家として財政のさらなる悪化に目をつぶることになり、世界に対して誤解を招くメッセージを送ることになってしまいます。その結果、日本国債の格付けに影響が生じかねず、そうなれば、日本経済全体にも大きな影響が出ることになります。
そもそも、欧米ではすでに超低金利政策の出口戦略が模索されている中で、こんな悠長な議論をしていてよいのか、といった根本的な問題もありますが、それはさておくとしても、誤った認識に基づく放漫財政で国を危うくすることは許されません。

    消費税引き下げは問題だらけで甚だ疑問
コロナ対策の窮余の一策として一時的に消費税率を引き下げてはどうか、という政策の提案もあります。しかし消費税は、すでに社会保障制度を持続させていくための極めて重要な「切り札」として位置づけられています。
増え続ける高齢世代の社会保障費をいかに支えるか。この方策については長年議論されてきました。その結果、少子高齢化の進展を見据え、減りゆく勤労世代からの保険料や所得税などだけでは高齢世代を支えていけないという結論に達したのです。そして今後は老若関係なく経済的な担い手が国民全体の社会保障を支えていくことになり、消費税は経済力のある高齢者も担い手に回れる有力な財源として重要視されてきたのです。そして、与野党の垣根を超えたいわゆる3党合意に基づき、消費税率は5%から10%に引き上げられました。社会保障を今後も持続させていくために、消費税の役割はますます重要になっているのであって、引き下げは向こう半世紀近く進む少子高齢化という日本の構造問題の解決に逆行するものなのです。
コロナ対策の一環として、消費税を引き下げた国もあるという指摘もあります。たしかに英国やドイツでは、付加価値税率を一時的に引き下げました。英国では、半年間限定で飲食やホテルの付加価値税を20%から5%に。ドイツでもやはり約半年間、19%から16%に(食品などは7%から5%に)引き下げています。
しかし日本と欧州では、かなり事情が異なることはあまり知られていません。欧州では、価格転嫁義務がありませんので、減税しても値札を下げるかどうかは事業者の判断に委ねられているのです。そのため、発表から実施まで1ヵ月足らずで実行に移されました。値札をそのままにする業者も多い(減税分は事業者の懐に入ります)ため、消費者団体からは反対の声が上がりました。
一方、日本では、消費税はきちんと価格に転嫁しなければならないと法律で定めていますので、あらゆる財・サービスの値段を具体的にどこまで下げるか、電車やバスの運賃料金から診療報酬に至るまで、値決めと値札の付け替えをせねばならず、実行するまでに最低半年以上かかることになります。法改正等も含めた政策実現ラグを考えると、引き下げの実施はずっと先の話になり、そもそもコロナ対策としての有効性が甚だ疑問なのです。
さらに言えば、消費税の引き下げ発表から実施までの期間(リードタイム)において。買い控えが起こります。コロナ禍を踏まえた経済対策の[環として実施するにもかかわらず、買い控えを引き起こしてしまうようでは、政策として致命的であり、非現実的です。「減税」と言えば、当然多くの人々が歓迎しますが、実現可能性やその有効性を鑑みれば、これは絵に描いた餅と言わざるを得ません。
いったん引き下げた消費税率をいつ上げ戻すのか、上げ戻す場合の駆け込み需要と反動減対策はどうするのか……などと難題は他にもあまたあります。さらに、もう一つだけ問題点を指摘しますと、仮に消費税率を5%に引き下げた場合、軽減税率対象品目については108分の3(=4.5%)引き下げられ、その他は110分の5(=4.5%)引き下げられることとなり、低所得者ほど恩恵が(額でみても率でみても)小さくなってしま
うという、逆進性が高まってしまう問題もあります。

       日本は氷山に『向かって突進している

 昨今のバラマキ的な政策論議は、実現可能性、有効性、弊害といった観点から、かなり深刻な問題をはらんだものが多くなっています。それでも財務省はこれまで声を張り上げて理解を得る努力を十分にして来たとは言えません。そのことが一連のバラマキ合戦を助長している面もあるのではないかと思います。
先ほどのタイタニック号の喩えでいえば、衝突するまでの距離はわからないけれど、日本が氷山に向かって突進していることだけは確かなのです。この破滅的な衝突を避けるには、「不都合な真実」もきちんと直視し、先送りすることなく、最も賢明なやり方で対処していかねばなりません。そうしなければ、将来必ず、財政が破綻するか、大きな負担が国民にのしかかってきます。
今回は、「心あるモノ言う犬」の一人として、日本の財政に関する大きな懸念について私の率直な意見を述べさせていただきました。今後も謙虚にひたむきに、知性と理性を研ぎ澄ませて、財政再建に取り組んでいきたいと思っています。

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たもりんのことわざ・名言・川柳

「もうこれで満足だという時は、すなわち衰える時である」

(渋沢栄一)

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Have a nice day.
ビジネスライブの会事務局
森田 康之
<dudxu906@sakai.zaq.ne.jp>

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